昨年の御嶽山の噴火災害がありました。
そして、今年に入って箱根や浅間山などで火山活動が活発になってきています。
これを受けて、「次は富士山が噴火するのではないか」とメディアが取り上げることもあり、富士山に登ろうと考えている方は不安を感じられていらっしゃるかもしれません。
そこで、LISの富士山ツアーに参加する方への情報提供のため、情報を整理したいと思います。
(1)現在、富士山には噴火の兆候はありません
河口湖の水位の低下や、湧水量、積雪量の変化などを根拠に、「噴火の兆候では?」と週刊誌などが報道していますが、科学的な根拠はありません。
また、箱根と富士山は地理的に近いですが、地下のマグマはつながっていませんので、箱根で火山活動が活発になったからと言って、富士山も同じようになることはありません。
今年の積雪量が少ないのは、そもそも雪があまり降らなかったから、春の気温が暖かかったから、です。
ネット上で「地下で火山活動が起こっていて、その温度で雪解けが早くなった。」という情報を目にしたことがあります(^_^;)
このように具体的なデータを元に噴火の兆候があるとしている火山学者の方はいません。
「御嶽山の水蒸気噴火は兆候がなく突然噴火した」と理解されています。
確かに、警戒レベルが引き上げられることはありませんでしたが、噴火の半月前に火山性の地震が発生したために、「火山の状況に関する解説情報」が気象庁から3回発表されています。
このような火山情報を気象庁が富士山に対して発表した場合は、すみやかに情報を収集し、参加者の皆様へお知らせを致します。
(2)御嶽山で起こった水蒸気噴火は富士山では起こりにくい
御嶽山には地獄谷と呼ばれる地熱地帯があり、ここで突沸現象が起こりました。
箱根の大涌谷も地熱地帯です。
富士山には過去には地熱地帯があったようですが、現在はありません。
熱水が溜まっている場所がなければ、水蒸気噴火は起こりくいです。
このことについて、詳しくは静岡大学の小山教授の記事をご参照ください。
(3)噴火に限らず、ガイドは「いつか起こるかもしれない」事態に備えています
私たち登山ガイドは、噴火に限らずあらゆる事故からお客様を守るのが仕事です。
何らかの火山情報が気象庁から発表された場合は、登山中でもすぐに情報収集出来る体制を整えています。
富士山の地理や、救助に関する知識を持ったガイドが同行しますので、迅速に安全圏への避難が出来る準備も行っています。
また、登山前に情報が入れば、台風や大雨予報の際と同じように安全を最優先に中止などの判断を致します。
噴火に限らず、自然の中に入る登山やアウトドア活動には一定のリスクが存在します。
市街地での生活と異なり、そのリスクを各自が判断し、何かあれば自分たちで対処しなければなりません。
これらの情報をご覧頂いても、富士山に登ることに不安がある方は、無理せずに来年以降に再度検討してみるのがいいかもしれません。