11月9日は、東京都の中学校の体験活動として、筑波山のガイドをしてきました。
学校として新たに「探求遠足」と銘打って設けた年間行事ということで、今回野外学校FOSに依頼がありました。
20代の頃から野外学校FOSのスタッフとして活動させてもらっていますが、この10年間は大半が富士山周辺での活動でした。
毎年中学生や高校生と自然体験を共にするのが楽しみでもあるのですが、今回は初めて筑波山をフィールドにするということで、いつも以上にこの日を待ちわびていました。
8日はガイドスタッフ一同で一日かけて下見を行い、キャンプ場で前泊をして当日を迎えました。
筑波山神社からスタート
生徒たちはバスを利用して筑波山にやってきて、10時から15時の5時間ほど筑波山を歩きます。
3クラスが12班に分かれて、筑波山神社とつつじヶ丘、2つの登山口からスタートしました。
私は筑波山神社から登る班を担当しました。
まずは筑波山神社に参拝
筑波山はちょうど紅葉を迎えていました。
女体山山頂からの大展望、引率の先生も楽しんでいらっしゃったのが印象的でした。
筑波山を南から北へ縦断
筑波山の南側は信仰登山の歴史が深く、今も登山者が多いです。
この南側が筑波山の表の顔だとしたら、北側は筑波山本来の自然が残る裏の顔と言ってもいいでしょう。
平日でも大勢の登山者で賑わう御幸ヶ原、女体山を後にして、北側の山道に足を踏み入れていきます。
一歩足を踏み入れると、そこは登山道の両脇に笹藪が生い茂り、鹿や猪の痕跡が見られる素朴な筑波山の自然の世界です。
他に出会う登山者はほとんどおらず、ひっそりとしています。
今回私たちの班が下山で通ったルートは、ちょうどコナラやカエデなどの黄葉が見ごろでした。
午後の光が黄色に色づいた森に差しこみ、自分がガイドしていることを忘れてしまうほど本当に綺麗な光景でした。
もっと時間にゆとりがあればゆっくりと過ごせたのですが、カサカサと落ち葉を心地よく踏み分けながら、下って行きました。
最後は林道を歩いてつくばねオートキャンプ場で解散式となりました。
今回ガイドを担当した野外学校FOSのスタッフたち(全員写っていないですが・・・)
最後に記念撮影をする生徒たちの楽しそうな表情に、私たちも自然に顔が綻んでいます。
今日がどんな一日だったのかは、何より生徒たちの表情が一番物語るということを私たちは良く知っています。
学校登山を少人数制で実施する意味
通常の学校登山と言えば、1クラスがまとまってゾロゾロ歩く形が大半です。
隊列が長くなり、後が閊えてしまうので立ち止まって写真を撮ったり、自然観察をする余裕がなく、ただ、前の人に続いて歩くだけの体験になってしまいます。
学校の教室の中では体験できないことを、学校外で生徒たちに体験してもらうためには、1クラス(30-40名)という単位は大き過ぎます。
自然との距離、ガイドとの距離、仲間同士の距離をぐっと縮めて、一日の体験活動の効果を最大限に高めるには、本来であれば5-6人のグループが理想的なのだと思います。
ただ、学校行事として実施する上で予算的な制約がありますので、FOSでは多くの場合10-12名のグループ(1クラス3分割)で実施してきました。
体験から学びにつなげていくために
学校ではカリキュラムが決まっていて、学ぶ内容が予め決められています。
生徒たちは「やらねばならない」から学んでいるのであって、主体的に学びにくいという側面があります。
しかし、山に入ると街では見ることのない、珍しい地形や巨岩、雄大な展望、貴重な動植物に出会います。
また、見知らぬ土地を訪れることでその土地を題材にした文学や歴史に触れることになります。
生徒によって、興味の矛先は違うかもしれませんが、地理、地学、生物学、国語、歴史など、色々な分野へと一日の自然体験がきっかけとなって興味が波及する可能性を秘めているのです。
そこで何より大事になってくるのが、生徒が興味を持つために「面白い!」「楽しい!」「気持ちいい!」というポジティブな意識を体験の中で得ることです。
かつての自分自身がそうでした(^_^;)
高校や大学の授業がつまらないと感じたからこそ、山の世界に触れて、一気にこの世界に魅かれて没入していったワケです。
普段の学校の授業を「楽しい!」と思って聞けている生徒であれば、その体験の必要性は少ないのかもしれません。
しかし、学校が嫌いだったり、授業が「つまらない」と思っている生徒にほど、このような体験の価値が高いと言えます。
面白いからこそ、その山や自然に興味が湧き、より詳しく知りたくなる。
その湧いてきた感情こそが、学びのスイッチを消極・客体(受動)から積極・主体(能動)に切り替えるキッカケになるのです。
楽しむこと、遊ぶことの大切さ
学校の授業とは違うので、私たちガイドスタッフは長々と自然解説をしたり、生徒たちに一方的に話をすることはありません。
また、少人数班に分かれてそれぞれの班のペースで歩いてますから、「無理やり歩かされている」のではなく、体験の場に生徒がより主体的に参加できるように配慮をして実施しています。
歩きながら会話をしやすい人数単位だと、立ち止まって会話もしやすいので、子どもたちが疑問に思ったことはガイドに直ぐに質問出来る環境です。
少人数で、時間的ゆとりと、自由度のある活動をしていると、生徒たちが自由に遊べる時間が生まれます。
そうすれば、中学生にも幼児の頃のような無邪気な遊び心が蘇ってきます。
そうして、楽しんだり、遊びながら得た体験を、上手く次の学び(事後学習)に繋げて行ってもらえたら、学校生活の中でより多様で豊かな学びの場に発展していくのではないかと思っています。
学校登山の新しい形
班を細かく分けたり、登るルートを分けて、より質の高い体験を求めるこのようなスタイルは、おそらく学校登山としてはまだ全国的にも珍しい取り組みです。
少しずつ、このようなスタイルが学校登山の新しい形として徐々に浸透していくことを願っています。
野外学校FOSとして、中学校・高校の学校行事で自然体験プログラムを提供して今年で10年。
今回は班付きのガイド12名に、怪我をしていて登山が困難な生徒2人に着いて行動した特別班のガイド1名、緊急時サポートスタッフ1名、本部対応3名、合計17名の体制で実施しました。
FOSのスタッフは戸高雅史、優美夫妻をのぞくと、皆それぞれ普段は別の仕事をしています。
このような学校プラグラムがある時だけ、休暇をとって全国から集まってきます。
私のように専業で登山ガイドをしている者はほとんどいないのです。
それでも、ガイドスタッフの誰もが魅力的な人たちです。
自分の好きなことを追及して自由に生きている大人に出会うという体験も、子どもたちにとっては刺激になるのではないでしょうか?
毎回、他のスタッフのガイドぶりと、生徒たちの新鮮な反応に刺激を受けて、私自身も多くのことを学び、貴重な経験を積ませてもらっていると思っています。
なので、個人的にはもっと活動する機会が増えていくといいなと思っています。
学校関係の方で、このような体験活動に興味のある方は、是非こちらの記事もご覧になってみてください。
FOS通信「東京都立大泉高等学校附属中学校探究遠足」