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「初心者はストック(トレッキングポール)を使ってはいけない」から改題しました(2021年)
いきなりタイトルから攻めてます(^^;)
 
私がガイドする時は常日頃から「ポールは限定的に使うべし」と話しています。
 
バランスのとれた安定した歩行が出来ていない方が、ポールに頼り続けることに危険が潜んでいます。
 
今日はこのポール使用のメリット・デメリットについて書いてみたいと思います。
 
普段からポールを使ってる人も使ってない人も、早合点せずに最後まで是非とも読んでもらいたいと思います。

この20年くらいで、ポール使用意識が変わってきた

私が登山を始めた頃は百名山ブームで、ダブルポールを使ったヨーロッパのトレッキングスタイルが少しずつ浸透してきている状況でした。
 
登山者層が中高年の方が大半だった時代から、ここ数年の山ブームでは若者から高齢者まで幅広い世代が歩くようになり、女性や子どもの登山者も増えました。
 
「登山」という言葉が持つ敷居の高さ、厳しいというイメージが薄れてくるに伴い、体力に自信がなくても自分に合ったルートを選んで歩くというスタイルがこの10年ほどで定着してきていると思います。
 
そんな時代の変化の中で、徐々に登山者がポールを使用する上での意識が変化してきているように思います。
 
体力に自信がない方、高齢者、膝に不安がある方が使用していたり、足のトラブルや疲れた時に使用する形が多かったと思います。
 
それが、近年特に機動力を高めるツールとして、若い方や体力がある方も積極的に使うようになってきました。
 
そのため、登山を始めるにあたって最初に購入する装備の一つになりました。
 
登山の必需品として扱われるようになってきたと言っていいと思っています。 

ポールを使うと確かに楽なんですが・・・

 確かにポールを使うと楽です。
 
両手にダブルポールで歩けば、バランスを崩したり、スリップするリスクが減り、かなり安定した歩行が出来ます。
 
でも楽をした分だけバランス保持力が養えません。
 
膝が痛くなるからと毎回ポールを補助に使っていたら、いつまでも歩き方が上手くならないのです。
 
ポール使用にはメリットもデメリットもあるのです。

岩場でバランスがとれない登山者を見かけた話

先日、北アルプスの水晶岳の山頂である登山者の方と会いました。
 
山頂付近の岩場でヨタヨタフラフラしながらダブルポールで歩いていました。
 
年齢は50代後半くらいの方だったでしょうか。
 
もちろん、平坦地なら普通に歩ける方なんだと思います。
 
私はその方の後から登ってきて先に山頂に立ち、先に下山して行きました。
 
おそらくあの岩場の箇所に限って言うと、歩行ペースが3倍くらい違うんじゃないかと思います。

岩場を安定して歩ける人、歩けない人

岩場では本来ポールを締まって、手を使って登り下りしましょう、というのが一般的になっています。
 
ただ、水晶岳の山頂付近は北アルプスの他の場所と比べて比較的危険性は少ない場所です。
 
さらに傾斜が緩いため、岩に手をついて歩くためには上半身を屈めて歩かないといけない場所でした。
 
そのため、この方はそのままポールを使用して歩いていたんだと思います。
 
ただ、このような大岩が積み重なった場所は、足の置き場以上にポールを上手く突く場所もないのです。
 
そのため、ポールを突く場所をあちこち探しながら歩いているので、上半身が動いてバランスを崩すという悪循環に陥っていました。

バランスを保つ能力

あくまで、水晶岳山頂付近はクライミング経験がなくても、岩場慣れしている登山者なら手を使わずにスイスイ歩ける場所です。
 
でも、岩の上の足場が小さかったり、傾いていたりするため、バランス保持力がない方は悪戦苦闘してしまうのです。
 
ではバランスを上手く保てる方と、保てない方の違いはどこにあるのでしょうか?
 
もっとも影響するのは、足運びです。
北アルプスに登るような方なら、フラット歩行と2軸歩行については、是非ともマスターしておきたいです。
👇参考動画

 
そして、次にバランスを保ちながら重心移動が出来る姿勢と歩き方すること。
このためには、一定程度の下半身の柔軟性が必要になります。
筋肉が硬いと関節可動域が狭くなるため、岩場のような段差の多い場所で、体が上手く動かずに、フラフラとバランスが崩れやすい状態になってしまうのです。
 
このあたりは、言葉で説明するのが難しいので、以下の動画や私のヤマケイオンラインの記事や書籍などを参考にして頂き、それでも分からないければ、こちらに参加してみて頂ければと思います。。

コツを知らずにポールを使っていると、姿勢が崩れたまま歩いている

 今回は、これほどバランス保持力がない方が北アルプスの水晶岳まで登ってきていたということに、深い問題があるなと感じました。
 
警鐘を鳴らす必要を感じて、ブログ記事に書くことにしました。
 
山頂に岩場があったとしても、そこに至る途中に岩場がなければ、北アルプスの稜線でもあってもポールを頼って登ってこれてしまうのです。
 
おそらく、この山頂付近の岩場が長く続くような行程だったら、登って来れなかったかもしれません。
 
また、これは私の推測ですが、この男性は日頃の日帰り登山でも常にポールを使って歩いてるのではないかと思います。
 
同年代の登山者の中でも飛びぬけて、バランス保持力が無さ過ぎる様子だったからです。
 
ここに、ポールを日常的に使うことのデメリットが現れています。
 
敢えて厳しい言い方をすれば、ポールを使うことで自分の歩きが下手であるという現実に向き合わずに済んでいるのです。

そういう私もかつては逃げてました

ここで白状すると30代前半のガイド活動を始めたばかりの頃の私も、深く考えずにポールを使っていました。
 
夏の間に20日程度山を歩いていたので、足への負担を減らそうと、疲れを感じている時はダブルポールを使っていました。
 
その後、ポールに頼らずに、姿勢や歩き方を工夫して歩くように気を付けるようになって、しばらくポールを使わないで歩いていた時期がありました。
それでも、膝を痛めたり、少しでも足への負担を減らしたいと思っている皆さんに「ポールを使わないように」とアドバイスすることが忍びなくて、どのようにポールを使ったら、上手く歩けるようになるのかを研究しました。
その結果、姿勢を崩さずに、安定して歩けるポールの使い方を見出して、今では一本でポールを使う方法を指導しています。

ポールを使うなという話ではありません

膝が痛かったり調子が悪いなと感じた時にポールを使うことは間違ったことではありません。
 
また、岩場、ガレ場でも2本の足でしっかりバランスをとって歩ける方、安定した歩行技術が身についている方は、手を使う必要のない岩場以外ならどんなにポールを活用しても問題ないと思います。
 
私が問題だと思うことは、ポールがないとバランスを保てない登山経験の浅い方が、ポールに頼ることを慢性化させてしまうことです。
 
登山に必要なバランス保持力を養わないまま、筋力と心肺機能だけが向上して、登る山をステップアップしていくと、先ほどの例にあげたケースにつながっていくのではないでしょうか。
 
ポールを使うことで短期的には北アルプスに登頂するという結果は残せるかもしれません。
 
しかし、危なっかしい不安定な歩きを続けていれば、転倒・滑落するリスクを抱え続けて登山をしていることになります。
 
加えて言うなら、今以上に筋力やバランス力を向上させることが難しいご高齢の方は、無理せずポールを活用して頂きたいと思います。
 
一般的には60歳代でも意識的にトレーニングをすれば、筋力UPが可能です。
 
年齢だけで線引き出来るものではないと思いますが、身体能力を鍛えることが難しい方は道具の力を最大限活用して頂きたいと思います。
そして、自分自身の身体能力を鍛えたい方は、ポールを限定的に使いながら、ポールがなくても安定して歩ける能力を身に着けて頂ければと思います。

装備が高機能化することで見失ってしまうこと

ポールに限ったことではないですが、現代は登山装備が充実しています。
 
そのため、高機能な登山装備を揃えることで、自分自身の登山力を総合的に押し上げることが可能です。
 
しかし、それは自分自身の実際の登山力ではないということを見落としがちです。
 
速乾性の高いアンダーを着ることで、大量に汗をかいてもすぐに乾いて汗冷えしにくくなっています。
 
でもその分、脱水が原因で高山病症状に陥る方が増えているように思います。
 
汗冷えはしにくく、不快感が低減されても、汗をかく量が変わったわけではありません。
 
発汗を抑える歩き方、発汗しても脱水症の影響を避ける適切な水分補給法は自分自身で獲得していくしかないのです。

シングルポールのすすめ

私が指導しているポールの使い方についてはこちらのヤマケイオンラインの記事をご参照ください。

また、ポールの使い方、安定して歩く方法については、【山の歩き方講習会】でお伝えしています。

山の歩き方講習会で、歩き癖のチェックをしています

LISが開催している山の歩き方講習会では、1人1人の歩き癖のチェックを行っています。

バランス良く、均等に体重をかけて歩いている方は実際には非常に少なく、大半の方は重心のかけ方に「偏り」があります。

偏りが大きい方ほど、それが靴擦れや膝痛などの原因になる傾向があります。

姿勢改善の方法も指導していますので、機会がありましたら、是非、山の歩き方講習会へご参加ください。

登山WEB教室でも膝痛に関して、動画で解説しています

膝痛に関する情報は、文章や写真だけでは伝えにくいので、私が動きながら解説した動画を登山WEB教室に掲載しています。

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