利口な不服従
不二家が期限切れの食材を使っていたことで、随分波紋が広がってきている。 誰もが知っているブランドであり、全国で展開している大きな企業なだけに、こういう問題が起こると、被害を最低限に抑えることは難しいのではないだろうか。 食品を取り扱うことだけじゃなく、直接的、間接的に、消費者の方々の健康や命に関わるサービスに携わる人も多いと思う。 そして、命に関わらずとも、仕事をしている以上、誰もが消費者に不利益を与える、”加害者”になる可能性は、常に存在している。 そういう意味では、他人事とは思えない気がするのだ。 それにしても、企業が利益を求めるあまり、水面下でルールを逸脱していたり、不正が行われていて、消費者を危険にさらしている例は少なくないと思う。 他の分野でも、マンションの耐震偽装、車メーカーのリコール隠しもそうだった。 そして、このような不祥事が起こると常に指摘されるのが、「企業の体質」。 組織としての問題点が追求されているのを見て、思ったことはないだろうか。 「誰か『そりゃまずいよ』と言い出す人間はいなかったのかな?」って。 今回の不二家のケースで言うなら、社員の中に上司の命令に逆らってでも、不正を未然に防ぐために動く人がいなかったのだろうか? その人は会社を助け、消費者を助け、自らを助けることになったはずだ。 前置きが長くなったけど、ここでようやくタイトルの「利口な不服従」の話し。 「利口な不服従」とは、盲導犬に求められている重要な特性のことを指している。 盲導犬はユーザーである目が不自由な方の命令に従うのが基本。 しかし、命令に従うことでかえって危険がある時、例えば、車が通りかかっているときに、「GO!」と言われても盲導犬はその支持に従わないのだ。 これを「利口な不服従」と言い、これが出来なければ、盲導犬にはなれない。 将来、道案内ロボットのような物が開発されたとしても、おそらく盲導犬には敵わないだろう。 その場に応じた合理的な判断をし、常に危険を察知する感覚を持っている点では、人間よりも優れているんじゃないかとさえ、思える。 かといって、動物に出来るんだから、人間にだって「利口な不服従」が出来るってもんでもない。 先ほどまでの話しに戻ると、そもそも、会社や組織は命令に従わない人材を必要としていない。 働く側にも色々なシガラミがあって、命令に反する行為をとるのには勇気がいる。 まして、法律に違反する行為なら反対しやすい。 しかし、各自のモラルや価値意識に関わる部分では判断が難しくなる。 僕自身も、そのような細かな問題に時々直面しながら、周囲も含めてどのように反応しているかは人それぞれ。 何やら話しが長くなっちゃったけど、何が正しいとか、間違っているとか善悪判断だけで解決する問題じゃないなぁと思うのです。 もちろん、ルール違反には「NO!」と言えるのであればそれが一番。 でも、一番大切なのは、「従う、従わない」「流される、流されない」の二者択一で簡単に結論をだすことよりも、理想と現実のハザマにいる自分にきちんと自己一致することなんじゃないかと思っているのであります。