「沈黙の夏」
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八月中旬のある日、起きて庭を見ると何やら様子がおかしい。 もともとお世辞にも綺麗とは言えない庭ではありました。 雑草も最低限しか抜かないで、可能な限り自然なままにしていました。 もともと庭に自然に生えて来ていた高砂百合は大切に育てていましたし、ローズマリー、セージなとハーブ類は苗を植えて育ててました。 育てている花の回りの雑草は意識して抜いてましたが、特別に仕切ったりしていなかったので、混然一体とした庭でした。 その庭が、ある朝窓を明けて見てみると、何やら色が変です。 植物の緑の色に覆われていた庭が、枯れ草色に覆われています。 一瞬で異変を感じ取ると同時に血の気が引きました。 確認のために庭に下りてみても、目の前には見たくもない光景しかありません。 一面が全滅して枯れていて、突然冬が訪れたかのように色彩は失われました。 春に綺麗に花をつけたセージは、無残にも全ての葉が枯れています。 「あ?」と言葉にならない声を発しただけで、部屋に入りました。 そして、今見たことが信じられず、夢であって欲しいと思いつつ二度寝したのでした(^_^;) それ以来、庭を見る度に心が痛み、憂鬱でした。 不動産さんに問い合わせようとは思うのですが、聞く気にもなれず、怒りを通り越して、ただただ気持ちが沈む日々でした。 先日ようやく電話で確認しましたが、やはり予想通りといいますか、大家さんに除草剤を撒かれてしまったようです。 突然我が家の庭に訪れた「沈黙の夏」。 失われたものはあまりにも大きいです。 「何故断りもなく?」 心は傷ついたまま、いつまでも引きずっています。