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北東北遠征レポート第5段というか、番外編です。

前回のエントリー「ブナ・苔・清流が美しい鳥海山麓の森へ」で北東北の遠征を終えたのですが、実はこれまでのレポートで触れていなかった出来事があったのです。

そう、熊に出会ってしまったのです

「白神山地はこの時期こそがゴールデンウィーク」

このエントリーでは書きませんでしたが、実はこの時に熊に遭遇していたのです。

長年山を歩いてきましたが、熊の痕跡を見ることはあっても出会ったことはありませんでした。

これまでも熊に遭遇しやすそうなルートを単独行で歩く時はそれなりに気をつけていたからだと思います。

 

近年、東北ではツキノワグマが増えている

これまでも、八幡平、八甲田山と歩いてきて、単独で歩く時は定期的に音を立てるように気をつけていましたし、複数で歩く時は完全にバラバラの行動にならないようにしていました。

東北を旅をしていると、テレビのニュースでもキノコ採りの登山者やハイカーが熊に遭遇したニュースが流れていました。

東北では近年ツキノワグマの生息頭数が増えているようで、注意が必要だと感じていました。

 

特に、白神山地初日の最初の行動は朝一番の時間帯で、人気のない時間帯でした。

登山口の駐車場に私たちが一番乗りでした。

 

二ツ森への登山ルートは最初は下りで始まります。

今日は午後にもう一つ別のルートを歩く予定だったので、足早に歩いていました。

下り道が登り道に転じて、しばらく経った時、登山道脇の茂みから物音が聞こえてきました。

 

出会いはいつも突然にやってくる

私は基本的に登山中でも周囲の物音には敏感な方だと思います。

そうして他の方が気が付かない鹿などの野生動物に気付いたりできるので、この時も藪の中に何か動物がいるのが分かってまずは、物音をたてました。

意識的に足音を大きく立てて歩き、口笛を吹きました。

でもその音だけでは逃げる様子がありませんでした。

先ほど聞こえた物音は登山道脇の小さな尾根の先の茂みから聞こえていたので、こちらから目視することが出来ません。

ゆっくり何かの動物が移動するような音です。
(葉がカサカサと擦れる音がしました)

カモシカは比較的警戒心がなかったりするので、カモシカかなと思いました。

音が近づいてきたのを感じて立ち止まり、目の前にある倒木の影に動くものがあるように見えたので、体を倒して覗きこんでみました。

ちょうど5m位の距離で目が合いました。

目が合った瞬間、向こうもビックリして一瞬のうちに反転して、小尾根を乗り越えて逃げ去っていました。

【遭遇現場】指を差した方向に向かって、小尾根の向こうに逃げていきました。

この茂みの中に倒れかかった木があるのが分かるでしょうか。
ちょっと分かりにくいので、下の写真に木を書き入れてみました。

この木の下から熊が現れ、そこを潜って去っていきました。

私の後ろを歩いていたハルは、突然茂みの中を爆走して逃げ去っていく動物の物音を聞いて、熊だと察知しました。

鹿のように跳ねるような音じゃなかったですからね。

しかし、熊が逃げていった方角がハルがいた方角じゃなくて良かったです。

 

目が合ったのはほんの一瞬(0コンマ何秒でしょう)で俊敏に逃げていきました。

大型犬がトップスピードで山の斜面を駆けて逃げ去った感じです。

もし、あのスピードで襲いかかって来たら、至近距離では熊撃退スプレーを持っていても使えないでしょうね。

 

目が合ったのが一瞬で、日陰で見えにくかったのではっきりと姿を見る間もありませんでした。

ただ、まっ黒な動物、大型犬くらいのサイズ、あのスピード、どう考えてもツキノワグマです。

大きさから推測すると、一人立ちしたばかりのまだ若い熊だったようです。

 

この後は手を叩いたり、声を出したりしながら二ツ森に登りました^^;

そして、登山口に向けて下山して来たタイミングで上の現場写真を撮りました。

まだ少し緊張感がとれていないのか、笑顔が堅いです^^;

 

こちらは翌日、世界遺産センター藤里館にあった熊の剥製と記念写真

おそらく出会った熊もこれと同じくらいのサイズだったと思います。
翌日なので、余裕の笑顔です(^.^)

 

関東周辺は熊の生息頭数が少ないので、登山道を外れて歩いていても、なかなか熊に遭うことは少ないです。

今回は登山口からわずか20分ほどの距離で、しかも登山道を歩いていて遭遇したので、白神だけでなく、東北の山は熊が多いということを実感した次第です。

 

熊鈴を持たないなら他の手段を

落ち葉の上をはっきりと音を立てて歩いたり、口笛を吹きましたが、この音では熊は逃げませんでした。

熊は本来、人間を嫌がって不審な音を聞いたら逃げるはずです。

推測ですが、若熊だったのでまだ人間と遭遇する経験があまりなく、好奇心で物音がする私の方に近付いてきたのかもしれません。

 

今回、熊鈴を付けて行動していませんでした。

熊鈴を付けていたら、どのような結果になっていたかは全く分かりません。

熊鈴の音に気付いて、熊が早めに逃げていれば遭遇する危険を回避できたと思います。

ただ、熊によっては熊鈴の音に関心を示す場合もあると聞きますし、熊鈴のようにずっと音が鳴り続けると警戒心が薄れるという意見もあるようです。

 

個人的には熊鈴を付けたり、ラジオを流して歩くと自分自身が周囲の物音に鈍感になってしまうことが嫌で、熊鈴を付けて行動することはほぼありません。

山では熊以外にも落石やスズメバチ、蛇など他にも遭遇しては危険なことがあります。

熊対策には熊鈴をつけるのが最も適切な方法だとは私も思いますが、私は、その他のことも含めて総合的に判断して熊鈴を使っていません。

しかしながら、熊と至近距離で出会わないために、何かしらの手段を使うべきだということを実感した出来ごとでした。

落ち葉の上を足音を大きく立てるのも、口笛も効果が無かったので、あとは笛(ホイッスル)、拍手、声だしなどでしょうか。
熊鈴を持たない方は、何らかの手段を用意するのがいいと感じました。

ストックを持って歩いていると拍手はできないですし、笛も吹きにくいです。

誰にでも出来るのは定期的に大声を出すことなのでしょう。

 

普段から周囲の物音や気配を気にして歩く

今回の出来ごとの中で良かった点は、熊が茂みから登山道に出てくる前に、こちらが物音に気付けていたことでした。

そのため、こちらとしては不意打ちをくらわずに済み、熊としっかり目が合いました。

熊は逃げる者を追う習性があると聞きますので、物音に気付かずに登山道を歩き続けていたら、熊にとってみたら私が背を向けて逃げているように見えたと思います。

また、背後から突然熊が現れたら、私もさぞかし驚いて、どんな行動をとったか分かりません。

熊だとは分かっていませんでしたが、事前に物音で動物の存在に気づけていて良かったです。

緊張感を持って熊と対することが出来たことが、不慮の事故を防ぐ要因になったのだと思います。

 

熊の出没例がないエリアで登山道を歩いているだけでしたら、必要以上に怖がる必要はないと思います。

ただ、東北など熊の出没例が多いエリアを歩く際は、登山道を歩いていても遭遇する危険性があることに十分注意して歩きましょう。

特に、山菜とりやキノコ採りの方が遭遇するケースが多いので、登山道を外れる場合(お花摘み雉打ち)や沢登り、残雪期登山、バリエーション登山などは細心の注意を払いましょう。

また、沢の近くや風が強い時など、水の音や風の音で熊自身も人間の出す音に気付きにくい状況は、こちらもいつも以上に大きい音を出したり、耳を澄ませて周囲を警戒する必要があります。

熊対策はインターネット上で情報を得ることが出来ます。
特に、熊の生態に詳しい専門家が発信する情報を参考にされることをオススメします。

★追記

ツキノワグマは頭がいいので、個体によってもどんな音に反応するかの差が大きいようです。
100%正しい対策なんてないのかもしれませんが、少しでも多くの情報を得て、安全を確保する手段を出来る限り多く持って入山するのがいいのではないでしょうか。

ツキノワグマ対策についての情報は、こちらのページが内容が充実していると思いますので、参考になさってください。

http://www.forest-akita.jp/data/sansai/kuma-taisaku/kuma.html

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