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2025年に入りました。
今年は去年よりも多く文章を書くぞ、と意気込みをお伝えしておきたいと思います。

ということで、前回の投稿、岩場・岩稜帯を安定して歩くコツは? から間が空きましたが、その続きです。
未読の方はぜひ👆の記事も同時にご覧ください

今日はまず、低山でも現れるザレ場などの滑りやすい場所での歩き方について、解説していきます。

ザレ場を歩く上で大切な靴選びについて

上に参考用に6つの靴の写真を載せました。実は・・・

これらはどれも、ザレ場には適さないと思われるモデルです。
なぜ?これらがザレ場に適さないか分かりますか?

特別、どのメーカーの靴がザレ場に適さないということではありません。
ある特徴がある靴が、ザレ場に適さないのです。

まず、皆さんご存じのように、靴底の素材やブロックパターン(溝の形状)は、靴のグリップ性能に影響します。
しかし、経験上、ザレ場でのグリップ力に最も大きく影響するのは、靴底にある「アーチ部切れ込み」です。

👆この「アーチ部切れ込み」は、大半の登山靴の靴底には付いているのですが、ハイキング系(主にミドルカットやローカット)の靴、トレラン系の靴には切れ込みがないものが多いです。

この切れ込み部分は、特に踵側が大きな段差になっていて、この部分が砂や小石などの路面に食い込むことで、下山時の靴底のグリップ力が向上し、とても歩きやすくなります。
当然ながら、この切れ込みが路面に食い込むように歩く必要があり、そうした詳しい歩行技術はぜひ講習に参加して学んで頂ければと思います。

(注記)上記すべての靴を実際に履いたことがあるわけではありません。
ただ、このようなアーチ部切れ込みのない靴を私もたまに履くことがあり、ザレ場の下りでは確実に滑りやすくなります。
滑りやすい場所で安全確実に下山したい人にとっては、この「アーチ部切れ込み」がある靴かどうかの影響は大きいです。

先に紹介した6つの靴のように、切れ込みがなく靴底がフラットになっている靴は、基本的にはミドルカット・ローカットのハイキング用の靴に多いので、ザレ場を想定して設計していないのだと思います。

トレイルランニングやスピードハイクでは、早く下山します。
そのため、ザレ場の下りで確実に地面をグリップして歩くことがあまりないので、このような性能を靴底に求めない傾向もあると考えています。
ただ、スポルティバの岩場向けの靴にアーチ部切れ込みがないことを知った時は、私自身も正直驚きました。
推測ですが、ヨーロッパの山ではザレ場が少ないのか、ザレ場を下ることを度外視して設計しているのか、何らかの意図があるのではないかと考えています。

ザレ場を上手く歩くためには何を学べばいいのか?

私は普段ガイドとして岩場やザレ場が上手く下れない人を多く見てきました。
当然ですが、苦手である原因は人それぞれです。
ただ、苦手な人に共通している点を1つ挙げるとすると、「体重のかけ方」です。

ザレ場では支持脚(後ろ脚)に体重を預けられていないために、着地脚に大きな荷重が一気にかかってしまう歩き方をしているとスリップが起こりやすくなります。
いわゆる「着地衝撃の大きい」歩き方は滑りやすいわけです。
そのためにも、ザレ場のない場所であっても、着地衝撃の少ない歩き方が出来るようにトレーニングしていく必要があります。

前回の岩場・岩稜帯を安定して歩くコツは?の記事では、山のグレーディングに掲載されている技術的難易度を紹介しました。
岩場やザレ場が苦手だという人は、技術的難易度がC以上のルートを下る際に上手く歩けなくなりがちなのだと思います。

しかし、そのような岩場ザレ場が苦手な方が、技術的難易度AもしくはBのルートでは、上手く歩けているとは限らないのです。
AやBのルートでは困難な場所が少なく、一般的に距離も短いルートが多いためトラブルが起こりにくいです。
「上手く歩けない」「怖い」と感じるようなイベントが起こっていないだけなのではありませんか?

ですから、技術的難易度がAやBの優しい登山ルートでも、基礎的な歩行技術を理解し、着地衝撃がかからない下り方を習熟させていくことが大事なのです。

 

余談ですが、私が普段実施している講習会の内容を少しご紹介しておきます。

  1. 山の歩き方講習会 基礎的な歩行技術(フラット歩行・2軸歩行・重心移動と重心維持)とトレーニング法
  2. ザレ場歩き基礎講習 急斜面や滑りやすい路面での歩行技術(主に下りでの安定した歩き方)
  3. 岩場歩き基礎講習 鎖やロープのある岩場のある山道を手を使って安全に行動する技術(主にクライムダウン技術)

岩場・ザレ場への苦手意識の高い方ほど、基礎的な講習1をまず受講し、ザレ場に特化した応用的な講習2と、段階を踏んで学んでいくことをオススメしています。
何事も基礎がおろそかになっていては、高い技術力を身につけることは困難です。

 

さらにもう少し余談です。
運動神経が高くて若い人はこうした講習に参加しなくても何の問題も感じずに登山を続けられます。
ただ、大学生から山岳部やワンゲルで登山をはじめ、20年以上登山をしているような方でも、40代や50代になって上手く歩けなくなって、私の講習会に参加してくる方もいます。

若いうちは、筋力と瞬発能力だけでササっと下る形で、滑りやすい箇所もどうにか通れてしまうものです。
確実に安定して歩く技術を身につけられていなくても、若ければ意外とどうにかなるものです。

長く登山を楽しみたい人は、年を重ねるごとに歩行技術を高めることを忘れずに。

最後になりましたが本年もよろしくお願いします。

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