山小屋関係者など、富士山について良く知っている方ほど、山小屋ご来光を勧めます。
私自身もガイドを始めた当初は、「頂上も8合目の山小屋も見えるご来光は一緒だよ」と言われても、正直、素直に受け入れることが出来ませんでした。
しかし、ガイドを続けるうちに色々なことが分かってきて、山小屋ご来光を推奨するようになりました。
ここでは宿泊する山小屋(7-8合目を想定)の前でご来光を見てから、登頂するスケジュールのメリットをご紹介します!
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ご来光を見て、しっかり山小屋であたたかい朝食を食べてから山頂に向かうことができる
1時半起床、2時出発の場合、普段全く食事をとらない深夜・未明の時間になります。
携帯してきた冷たいおにぎりやパンなど食料は体が受け付けてくれないことが多いです。
富士登山時の疲労の多くは、このような影響でエネルギー補給が十分に行えないことも原因の一つになります。
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岩が多い道でも明るくしっかり足元を見て歩けるので、登山に慣れていない方でも安心
富士山は山頂近くなると、大きな岩が多くなり、段差が多くなったり、足元の岩動いたり(浮石)、砂利が動いて足場が崩れたり、歩きにくい道です。
真っ暗闇の中をヘッドライトの灯りのみで照らして歩く登山は、経験がない方にとっては非常に負担が大きいです。
その分、日中の登山の方が断然歩きやすくなります。
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頂上でのご来光待ちをしないので寒くない。持参する防寒着も減らすことが出来る。
山頂の最低気温は限りなく0度に近く、風があるとさらに体感気温が下がります。
そんな中、じっと動かずにご来光を待つ時間が、富士登山時の寒さのピークになります。
日中に山頂に行くと、最も冷え込んだ未明の時間ではないので、かさ張る分厚い防寒着は不要になります。
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山頂が最も混雑するピーク時間を外すことが出来るので快適登山ができる。
ご来光直後は登山者が山小屋の前などに集中します。
仲間とはぐれて人ごみの中で迷子になってしまうこともありますが、日中はそんな心配はいりません。
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「日本最高峰」の石碑前での記念撮影がしやすい
ご来光直後の時間は登山者で石碑前はごった返し。
行列が出来て、写真撮影するためだけに30分~1時間待ちくらいになります。
昨年山小屋でご来光を見て、昼間に山頂に着いた時はこの石碑前を貸し切りで撮影ができたくらいです。
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混雑時間を外れているので、山頂の神社、山小屋、郵便局、トイレなどの施設が比較的利用しやすい。
雲天や風が強い時のご来光直後は暖を求めて、登山者が山小屋に殺到します。
寒いので、皆さん当然トイレにも行きたくなります。
ただでさえ寒いのに、トイレに入るのに15分以上待つなんて信じられませんが、現実の話です。
日中なら、小屋内でゆっくり休憩が出来、行列に並ぶ必要はほとんどありません。
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頂上では雲でご来光が見れない時、8合目の山小屋では見えることがある
これは意外と皆さん知らないことかもしれません。
かつて、参加者の方の中で「富士山は高いから山頂だけは雲の上に出てて、山頂は絶対ご来光が見える」と思い込んでいた方がいらっしゃいました(^_^;)
そんなわけありません。その理屈だと山頂には雨が降らないことになっちゃいます・・・
富士山の気象のことを細かく触れると話が長くなりますが、この逆の話で山頂部だけに笠雲が掛かるときがあります。
このような時は残念ながら頑張って夜明け前までに登頂した皆さんだけがご来光を見ることが出来ません。
逆に山小屋で二度寝したりして、のんびりしていた皆さんは難なく、ご来光が見えるのです。
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子どもはご来光を求めていない
お子様連れのファミリーで富士登山をされる方も多いと思います。
そこで大事になってくるポイントです。
例外なお子様もいらっしゃるかもしれませんが、大半の子どもはご来光やお鉢巡りに興味がありません(^_^;)
背景となる宗教的な観点や「自然観」というものを持っていませんから、仕方がないことです。
個人的には、大人的な価値観をお子様に「無理強いしたくない」と思っています。
山小屋ご来光の場合なら、見たくなければお子様だけ山小屋内で寝ていることが出来ます。
実際にそういうケースは多いです(^.^)
眠気には勝てないのです。非常に正直でいいことだと思います。
「山小屋でご来光見ずに爆睡してた」っていうのも、良い思い出(武勇伝?)です。
小学生くらいの子どもにとって「頂上ご来光」が具体的にどのくらい辛いものか理解することは困難です。
そのことを考慮せずに、無理に頂上ご来光を決行すると確実に「登山嫌い」な子どもなってしまいます。
などなど、まだまだありそうですが、「山小屋ご来光」で登ることは良いことずくめです。
頂上でご来光を拝したいというお気持ちはとても尊いものがあると思いますが、挑戦するにあたってはそれなりの体力や登山経験が必要だということを念頭において頂きたいと思います。
頂上ご来光を目指したがために高山病になってしまい、登頂できなくなることもあります。
二兎追うものは一兎も得ず、です。
二兎追うものは一兎も得ず、です。
最後に、歴史的宗教的には、「ご来光は頂上で見るもの」のようなルールはありません。
かつて、満足な山小屋もない江戸時代は、落雷の危険性のある午後になる前(午前中)に下山するのが一番安全でした。
そのため、夜間から登らざるを得なかったことと、日本一の山頂でご来光を見ることが一体となり、分かりやすい目標として一般化しました。
LISでは「初心者でも安心」をテーマに開催しています。
そのため、「頂上で見ること」にこだわらないことで、登頂の喜びと、ご来光を見る喜び、、皆さんの一番の願いにしっかりとお応え出来るようにガイドツアーを実施してまいります。
頂上ご来光の富士登山ツアーが大半の中、あえて「山小屋ご来光」を推奨する事業者は少ないと思いますが、これをお読み頂ければ十分ご納得いただけると思います。
ご不明な点は遠慮なくお問い合わせください。
(注)一部登山ルートでは山小屋前からご来光が見えないことがありますので、分からない方は山小屋に直接問い合わせてください。