次に、登山体験を通して、養われる能力についても触れたいと思います。
体調管理力・環境適応力・危機管理力
登山は他のスポーツと異なり、丸一日、長い場合は数日に渡る長い時間、体を動かし続けます。
その中で自分自身の体に過剰な負荷をかけず、運動を持続することが出来るよう体調を管理していく必要があります。
「この歩行ペースではいずれバテてしまうかもしれない」
「そろそろ休憩した方がいい」
「荷物が重くて歩けなくなるかもしれない」
などなど、
自分がおかれている状況を自分自身で判断し、対処しなければなりません。
ですから・・・
「もう少しゆっくり歩くことにしよう」
「ここで休むことにしよう」
「荷物を軽くしたいから仲間に持ってもらおう」
などなど、
目の前の課題や困難な状況に対して、自分自身が体調を維持できる、運動を持続できる環境を作り出す能力が必要となります。
また、登山では天候やコース状況が常に移り変わるため、環境が変化し続けます。
特に、長期間の登山では、その変化し続ける環境に適応していく能力が必要となります。
さらに、トラブルや怪我があれば、自分達で応急手当やセルフレスキューを行う必要もあります。
仲間と登山を行うということは、単に一緒に歩くことでは留まりません。
ですから、登山とはお互いが支えあい、協力関係を築き上げる中で、体調管理力と環境適応力、危機管理力を高めていく運動とも言えます。
(さらに、「身体知」が養われると思っていますが、まだ論考が深まっていないのでまたの機会にします)
さて、ここからはさらにちょっと話が飛躍します(^.^)
登山で私が「養いたい」と思っている部分についてです。
独創性のある登山は感性を高める
登山はスポーツとは異なり、ルールが存在しません。
(当然、周囲に迷惑や環境負荷を与えないためのマナーはあります)
また、アウトドア・アクティビティは、競技場で行うスポーツと異なり、国内だけでなく、世界にも多様なフィールドが広がっています。
登りたい山、登り方、所要日数などの登山スタイルは自分自身で自由に決めることが出来ます。
真っ白なキャンバスに自分の好きな色で、好きな絵を描く行為に似ています。
誰かが計画した登山に参加したり、ガイドブックで紹介されているコースを歩くだけでも、もちろん登山を楽しむことは出来ます。
しかし、自分自身で1からオリジナルの登山計画を考え、自分一人で登山を完結することは、とても創造性のある行為と言えます。
あくまでも、単独登山を独創的に行うという、少し難易度の高い登山に限られる話ではあります。
ただ、その中で自分自身が求める登山のカタチを追求し続けることは、自分自身の楽しみや喜びを深く理解することにつながります。
さらに、私自身は出来る限り、登山中もあらかじめ計画したコースをなぞるのではなく、想定していなかった発見を楽しむようにしています。
それは、たまたま目についた動植物を観察することであったり、思いつきでコースを変更したりすることです。
楽しみや喜びを想定するという行為は、どうしても自分の頭で考えたこと、知識として得た情報が元になって「枠」を作り出しています。
その反面、想定していない発見を楽しむということは、枠を取り払い、自分自身の直感に委ねることになります。
このことが、自分自身の感性を引き出すことになります。
一般的なスポーツとは異なり、登山を始め、アウトドア・アクティビティの多くはルールに縛られません。
だからこそ、自分自身の独創性を追求しやすい環境とも言えます。
そのことが、感性を引出し、高めてくれるのだと思っています。
ある意味、登山は芸術活動や創作活動に近いものがあるのかもしれません。
登山で感性を豊かに
さきほど、「少し難易度の高い登山に限られる話」と説明しました。
そんな体験を続けてきた、私としては少しでも同じような体験を皆さんに体験してもらいたいと考えています。
私のガイドツアーでは、スケジュールにゆとりを持たせているのも、少人数制で実施しているのも、その為です。
想定していなかった発見を楽しんでもらえるように。
参加者の一人ひとりの「気づき」に、私自身も気づいて共感出来た時が、何より私自身も嬉しいからです。
その参加者がお子さんだった場合は、尚更、です。
スケジュールにゆとりがあれば、時間が許す限り、自然観察をすることが出来ます。
コースを熟知していれば、参加者の希望に沿ってコースを変更することも出来ます。
体力が無くても、安全に配慮しながらも、登山道のない森の中を自由に歩くことも出来ます。
ガイドや指導者が、参加者一人一人の独創性と個性を尊重することが出来れば、
難易度の高い登山や単独登山でなくても、同じような効果が期待できると思っています。
「感性を豊かにする登山」
こういうことを目標に掲げているガイドは他に聞いたことがありませんが、
だからこそ、私が一番大切にしたいテーマ、おそらく生涯追求し続けるテーマです。
人が自然に触れる、自然と親しむという行為は、そのくらい奥深いものだと思っています。
落ち葉の中から顔を出した森の赤ちゃん (「実生」みしょうと言います)
まだ、言葉が足りない部分もあると思いますが、ひとまず記事にしてみました。