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11月24日、屋久島の奥岳を縦走してきました。
何度も歩いている道ですが、今回初めて奥岳で朝を迎えることにしました。
 
この日は一日限りの晴天が予想されていたので、なんとなく、一日を有効に使う為に早出をしよう思い立ったのでした。
ご来光を迎える場所も特に決めず、朝3時半、淀川小屋を出発しました。
 
 
 
暗い森を歩き続け、森林限界を抜けて、奥岳の稜線に出る頃には、東の空が明るくなってきました。
 
ちょうど、栗生岳に登っている途中で、日が射してきました。
 
朝陽に輝くヤクシマダケの草原、霧が去って視界が開けると雲海に浮かぶ山岳地帯。
山頂から見えたブロッケン現象。
 
PB243335.jpg
 
荘厳で神秘的な奥岳の世界を初めて体験することが出来ました。
 
その後、マイナールートを通って下山。
なんとなく、登山者が多い大株歩道へは行かず、登山者の少ない西側に下山することにしました。
朝に宮之浦岳山頂近くで登山者とすれ違ってから、夕方下山するまで誰とも会いませんでした。
 
登山者が少ない分、原生自然を保ったエリア。
名前のない無数の巨木を見上げながら歩き続けました。
 
 
 
そして、出会ってしまいました・・・
 
突然目の前に現れた屋久杉の巨木。
 
木の根元に近づき、気付いたら、泣いていました。
 
何の涙なのでしょう。
悲しいのでも、嬉しいのでもありません。
 
ただただ、心が反応したのでしょう。
 
大きな幹にそっと手を触れて、しばらく見上げていました。
 
名前も無ければ、看板も立っていない、自然そのものの巨木でした。
 
 
 
これまで登山中に、自然に涙が出てきたことなんてありませんでした。
 
どうして、ここまで私の心が反応したのでしょうか。
 
まずは、単独登山だったことで、感情的な反応が出やすかったこともあるでしょう。
 
ただ、ここに巨木があるとガイドブックに載っていないことが大きく影響していると思います。
 
そこで巨木に出会うという「準備」を私はしていませんでした。
 
そこで突然目の前に巨木が現れました。
 
何のフィルターも掛かっていないまっさらな状態の私の心に、まっすぐ巨木が飛び込んできたのです。
 
 
 
自然により深く触れる体験を大切にしたい。
 
山頂を踏むだけの登山はしたくない。
 
そんな意味を込めて、登山ガイドという立場でありながら「Nature Guide」を屋号の中に掲げてきました。
 
今回、身を持って自然と深く触れる上でのヒントを掴んだように思います。
 
 
 
屋久島だけでなく、日本には自然豊かな場所はたくさんあります。
 
自然豊かなエリアでは、観光スポット(点)と違って、面で自然が広がっています。
 
その自然の中で、どこに触れるのか、見るのか、心が動くのか、本来は人それぞれなはず。
 
だからこそ、心の奥に深く触れる出会いのためには、むしろ出会いの準備はしない方がいい。
 
 
 
情報が溢れる時代だからこそ、あえて情報に触れない、準備をしない。
 
「登山はこういうもの」という枠を捨てて、出来るだけ裸になって自然に飛び込む。
 
こうして、方法や手段に囚われない行動が、心に響く体験に繋がることを実感した一日でした。
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