今冬から雪山デビューをしてみたい方、
すでに雪山は自己流で始めている方へ、
雪山を始めるにあたって重要な3つのポイントをまとめてみました。
(1)正しい技術を学ぶ
安全な斜面で滑落停止動作を練習する
雪山登山ではピッケル・アイゼンを使用して、安全に歩くための雪上歩行技術を基礎として、身に付けるべき技術がたくさんあります。
雪上での休憩の仕方、服装の調整といった初歩的な知識に留まらず、滑落停止技術、耐風姿勢、ルートファインディング、グリセード、ラッセル、ビバークなどの、雪山特有の技術が必要になります。
さらに、雪山では道迷い、気象遭難のリスクが高いことと、トラブルが発生した場合でも自力で対応できる心構えが必要です。
特に読図とコンパスワーク、気象予測、緊急時の対処技術も身に付けたいところです。
これらの技術を一度に身に付けることは難しいですので、時間をかけて少しずつステップアップしながら、身に付けていくといいでしょう。
(2)初めは何が危険か分からない
稜線東側に張り出した雪庇(北八ヶ岳にて)
上は北八ヶ岳・天狗岳近くの稜線に出来た雪庇の写真です。
大量の積雪で雪庇が出来ていて、もともとの地形が分かりにくくなっています。
多くの登山者は安全を考えて、右側に見えている樹木のさらに右側を登下降しています。(樹木の上部に多くの踏み跡が見えます)
しかし、ごく数名ではありますが、樹木の左側、雪庇近くを歩いた登山者の踏み跡も見えます。
この数名の登山者はここに足を踏み入れることのリスクに気付いていなかったに違いありません。
雪山登山は夏山と比べると、確実にリスクが高いフィールドに足を踏み入れていきます。
だからこそ、安全に登山するための様々な知識や技術が必要なわけですが、そもそも、「何も知らない」状態で雪山に行くと、「何が危険か」も分かっていない状態です。
結果的には、雪庇は崩壊せず、この数名の登山者は何事もなく下山したのでしょうが、それは「たまたま無事だった」だけに過ぎません。
雪山登山に限ったことではないですが、特に雪山はリスクが多く、命に関わることが多いですので、何が危険かを察知し、常にリスクを避ける行動をとることが大切です。
(3)効率よく装備をそろえ、正しく使う
10本爪アイゼンの誤った装着例
この写真は、八ヶ岳の硫黄岳へ登っている最中、樹林帯の急登を登りづらそうに歩いている登山者に出会った時のものです。
前方のグループの最後尾で遅れがちに歩いていたこの女性登山者の、後方数mまで近づいた時、登りづらそうにしている原因がようやく分かりました。(皆さんも写真で分かりますよね?)
おそらく、この方は10本爪のアイゼンを買ってきて、今回初めての装着だったのでしょう。
サイズの調整が誤っていて、登山靴のかかとの脇に隙間があります。
実際にはもう少しアイゼンを短くサイズ調整しなければならないのです。
この時はすぐに呼び止めて、グループ(山サークル?)の中のリーダーらしき方に声をかけて、正しい調整方法を教えてあげてくださいと伝えました。
他にも、アイゼンのストラップを自分で踏んでしまって緩んだまま歩いている登山者を見たこともあります。
八ヶ岳の硫黄岳など、雪山初心者に人気のルートに来ると、装備の正しい使い方も教わらないまま歩いている登山者に出会うことがあります。
インターネットでどこにいても雪山装備を買える時代になりました。
ネットで買うと安いかもしれませんが、店員さんから使用方法を分かりやすく説明してもらうことが出来ません。
また、雪山登山装備は一式そろえると非常に高額です。
自分自身の使用するシチュエーションに合った適切な購入をすること、無駄な買い物をしないように、購入前にしっかり情報収集をするようにしましょう。
いざ、雪山へ
八ヶ岳硫黄岳山頂からの展望(左から横岳・赤岳・阿弥陀岳)
今回は簡潔に3点だけに触れました。
さて、技術を教えてくれ、「それ危ないよ」と指摘してくれ、無駄な買い物をしないためのアドバイスもしてくれる。
そういう指導者があなたの周りにいますでしょうか?
山岳会やサークルに雪山に熟知した先輩がいれば、しっかり相談に乗りましょう。
グループに所属していなければ、これを機会に所属してみるのもいいかもしれません。
あとは、各都道府県の山岳連盟が主催している講習会や、ガイドが主催している講習会に参加するという手段もあります。
人通りの知識・技術を教えてくれる指導者に出会うことが、何より雪山への理解を早め、安全登山への近道になると思います。
LISでも11月から雪山入門・机上講習会、立山-初級雪山講習がスタートします。
是非、この機会をご利用ください。