ヤマケイオンラインでの連載記事、今月はポールの下山時の使い方について書きました。
トレッキングポールはどこに突く? 正しい姿勢で歩くためのポールの持ち方/使い方
講習会に参加したことがある方なら、すでに教わっていることですが、初めて読んだ方は、驚く方もいるかもしれません。
写真や動画を見ても分かりにくい、とにかく実際に試してみて欲しい
講習会だと実際にポールの使い方を変えて試してみながら解説するので、皆さん納得して理解してもらえる内容なのですが、いくら写真や動画があっても、従来の指導法とは真逆の解説してるので、理解しにくい点があるだろうと感じて、Twitter上で補足でいろいろと書きました。
この記事はそのTwitterのつぶやきをまとめて、再編集して記事にしています。
特に普段からダブルストックが基本になっている人にとっては、違うストックの使い方は抵抗を感じるだろうと思いますし、すんなり受け入れられる内容ではないので、記事へのリアクションが少ないだろうと思ってました。
日本の山では1本がいい
ポールを両手で使うのに適しているのは、ヨーロッパのトレッキングルートのように傾斜のゆるやかな場所です。
登山とトレッキングの境目が地形的に明確なヨーロッパに対して、日本は低山の樹林帯でも滑落したら危険な斜度があったりします。
そのため、岩場ではなくても、何かあった時のために片手を空けておくのが理想的ですし、常に山側に重心を置くことを意識する必要があります。
日本の登山環境にダブルストックはあまり向いてないのです。
ポールを製造・販売する企業が、装備の安全な使い方や歩き方の解説をしてくれたらいいのにと思うことがあります。
日本国内で登山用ポールが販売されてもう何十年も経っています。
●ポール使用で前傾姿勢になる問題
●ポール使用してもバランスが保持出来ない問題
それでも、これらの問題に、明確な答えが今まで提示されて来なかったのです。
下山中にポールを使いながら滑落してきた登山者が今までたくさんいたと思います。
これに対して、「頼るな」「依存するな」などの精神論が語られることはあっても技術論がなかったのです。
傾斜のある場所ではピッケルと同じように使うというのが私の現時点の結論です。
もし、もっといい使い方があったら教えてください。
ピッケルはポールよりも短いので、そもそも前に突けず、強制的に後ろに突いて歩くしかない
ピッケルを後ろに突いて下りる際に、写真のとおりやや体を斜めに構えて下ったり、斜めにジグザクに下る方が歩きやすかったりしますが、これは急斜面をポールを使って下山する時も同じことです。
おっと、このことは講習会の時は話していたのですが、今回の記事に入れ忘れました。
いずれ、この体を斜めにするメリットは詳細に解説したいと思います。
安全な登山のために、どう歩くのがベストなのか
自分もかつて「ポールに依存しないように」と言っていた時期があるので、かつての反省も踏まえて最近は積極的にポールの使い方を指導しています。
膝や腰などにトラブルがあって2本使わないと長く歩けない人もいます。
2本じゃないとバランスが保持しづらいとう人もいるでしょう。
その原因は、そもそも歩き方や姿勢、体の使い方にあるわけですから、それへの対処法を見つけ、具体的に教えることが出来てはじめてポールに頼らなくても歩けるようになります。
1人1人の歩き姿を見て、そういった指導が出来るガイドがもっと増えて欲しいと思っています。
(余談ですがそろそろ「歩き方指導者講習会」も開催して、指導できる人も増やさなければと感じています)
こうした重心と姿勢の観点での歩き方理論はいずれ登山の教科書に明記され、一般にも普及して行くと思います。
ポールを後ろに突くとか、最初のうちは「耳慣れない」ために注目してもらえないのだろうと思います。
手間も時間もがかかるんですけど、理解が広まるまで言い続け、書き続けるのみ、だと考えています。
ヤマケイオンラインの連載はまだ続きます。
ただ、どのくらい続くかは、皆さんからの反響次第です。