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登山の「ルート定数」って知っていますか?

まだ登山者の間でも認知度が上がっていないかもしれませんが、

今後登山界で普及していくと思っているので、ご紹介したいと思います。

 

「ルート定数」とは、特定の登山ルートの「体力的負担度合い」を数値化したものです。

これだけでは「何のこっちゃ」という方、

では、「信州山のグレーディング」(下図表)はご存知でしょうか?

yama-gure1.jpg

今年6月、長野県が発表したものです。

登山用品店にチラシが置いてあるのを

ご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。

今夏北アルプスに行った方は登山口や山小屋などに

掲示されているのを目にしたのではないでしょうか。

 

上の表(画像データ)の元となるPDFファイルは
コチラです→ ”信州”山のグレーディング マトリックス表
 
この表で必要体力度が1から10までの段階に分けられています。
 
この体力度のレベル評価の元になっているのが、ルート定数となります。
 
 
ルート定数については下記の一覧表を見て頂くのが分かりやすいです。
 

信州の主だった山、100ルートの体力度が紹介されています。

一覧表の右側に、

合計コースタイム(h)、ルート長(km)、累積登り標高差(km)、累積下り標高差(km)、

そして、ルート定数と記載があります。

 

分かりやすく説明すると、そのルートを歩くのに際して

1 必要な時間(平均コースタイム)
2 実際に歩く距離
3 どのくらい登るか
4 どのくらい下るか

この4つの要素を元に計算して導き出されるのが「ルート定数」なのです。

 

ルート定数で比較すると・・・

一覧表の99番高尾山(表参道コース)と94番槍ヶ岳(上高地から)を見てください。

ルート定数が高尾山「13.9」、槍ヶ岳「70.3」と記載があります。

数字だけで単純に比較すると、

槍ヶ岳は高尾山の5倍体力が必要となるということになります。

 

ただし、高尾山は誰しも日帰りで登りますが、

槍ヶ岳の場合は、山慣れている人なら1泊2日、通常は2泊3日、

のんびり3泊で登る人もいるかもしれません。

距離が長いルートについては基本的には複数日程に分けた方が

一日の歩行時間が短くなるので負担が少なくなります。

 

ただ、山小屋宿泊の経験が少ない方にとっては、

宿泊登山は日数が増えるほど負担が大きくなります。

また、高尾山と違って北アルプスは岩の多い登山道ですし、

気温も低かったり、風の影響を受けるので、体力を消耗しやすいです。

そのため、実際には5倍以上の差がある、

最低でも5倍は違うと考える必要があります。

 

ルート定数の計算方法

ルート定数を計算するには、上記4つの要素を元に以下の計算式で算出できます。

route-teisu.jpg
 
また、ルート定数に重さの要素(登山者の体重と荷重)をかけることで、
 
消費エネルギーを推定することも出来ます。
 
例えば先ほどの槍ヶ岳の登山ルート(ルート定数70.3)を
 
体重65kgの登山者が5kgの荷物を背負って歩いた場合、
 
70.3×(65+5)=4921(kcal)
 
すなわち、4921キロカロリーものエネルギーを登山によって消費することが推定できます。
 
 
 
これは基礎代謝量とは別になり、性別年齢によって基礎代謝量は異なります。
 
長期間の登山はかなり大きなエネルギーを消費します。
 
これら全てを食事で補給することは困難ですが、筋肉痛など体へのダメージを防ぐためにも、
 
出来る限り十分な食料計画を準備することが重要となります。
 

ルート定数が普及する意味

 
遭難事故が増え続ける背景に、
 
力量に見合わないルートに登ってしまう登山者が多いことがあるようです。
 
雑誌やWEBで見つけたルートが
 
実際に自分が登るとしたら体力や技術レベルに見合っているのか?
 
判断する材料が増えることは、良いことだと思います。
 
 
全てが数値に現れるわけではありませんが、
 
体力度や難易度が主観的に評価されていたものが、
 
客観的に数値となって評価される時代に移っていくことは確実です。
 
 
 
LISも既にルート定数を元に体力度表記を行っていました。
 
2015年からは「信州山のグレーディング」に合わせて、
 
ルート定数の数値をそのまま記載していくことに決めました。
 
ルート定数だけでは分からない部分もあると思いますので、
 
お問い合わせ時にご質問を頂ければと思います。
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