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2016年、息子4歳、私38歳(若い・・・)ふじっぴーと富士宮口5合目で記念写真

富士登山は突然に

8月上旬、突然仕事の予定が空き、時間が出来ました。

夏休み中の小学4年生の息子を連れて「どこか山に行こう」と急遽思い立ちました。

天気予報を見ると、太平洋高気圧の張り出しが弱いため北アルプスなどの日本海側よりも太平洋側の方が天気が良さそう。

南アルプスも考えましたが、今年は報道されているほどは混雑していない富士山がいいのではないかと思い、息子に声をかけました。

私「富士山登らない?」
息子「行く!」

ということで、登山3日前に突発的に親子富士登山が決まったのでありました。
高所に弱い妻は今回は留守番することになり、初めて父子で宿泊登山をすることにもなりました。

 

親子富士登山の事例としてはレアケース

この記事では、富士登山にやたら詳しいアラフォー親父と、年に家族で数回程度しか登山をしないサッカー小学生(息子)の富士登山がどんなものであったのか、父親目線での主観的な記録を公開します。

正直申し上げると、同じように富士登山をしたいと計画する多くの親御さんにはあまり参考にならないかもしれません。

その理由は以下の2点に集約されます。

  • 引率者である私がこれまでに何人もの小学生を富士山頂へ導いているプロガイドであること
  • うちの子も野外保育主体の保育園に通っていいて、小さいころから長く歩くことに慣れている。小学生1年生で北アルプスの3000m峰を既に登っている

こうしたレアケースな親子が行った富士登山なので、登山3日前に「富士山行こう」と決まってからもスムーズに準備が出来て、登山中もほとんどトラブルらしいトラブルはなく、標準コースタイムよりも早く行動してあっさりと登山を終えることになりました。

どこまで参考になる情報となるか分かりませんが、登山ガイドだからこそ、富士山を良く知っているからこそ大切にしたことなどがありますので、記録として残す価値はあるかもしれないと思い、文章に残すことにしました。

少し長くなるかもしれませんが、今回はまず前置きのようなお話を書き残しておきます。
次回以降、当日の登山の様子も記載していこうと思います。
ぜひゆっくりご覧頂ければと思います。

 

何度も富士山麓は歩いていた

富士山麓の御殿場口近くにある双子山(二ツ塚)や、西臼塚、吉田口側のお中道など、富士山麓のハイキングコースは過去に何度も親子で歩いたことがあります。
富士宮口の5-6合目までの区間と宝永火口までのルートは2歳の時(自力で歩いたのは一部区間)、4歳の時に登っています。【参考動画】

過去にこうして歩いたことがある道なので、過去の記憶が蘇ってきて、今回息子と富士山を歩き始めた時に感慨深いものがありました。

 

双子山は雪の時期にそり滑りをしたこともあります。
夏も秋も、色々な季節に富士山を訪れていて、近くから富士山を仰ぎ見る機会は何度となくありました。

もちろん、幼少期から葉山や横須賀西海岸の海で遊ぶ機会が多く、相模湾を隔てた富士山の姿を眺めた経験は無数にあります。

そんな富士山に、父親が何度となく登っていることは知っていますので、我が子なりに、いつしか日本一の山に登りたいという漠然とした思いが芽生えていたのかもしれません。

ただ、私自身としては子どもが富士山に登ることの大変さは良く分かっていたので、自分から「富士山に登ろう」という話を子どもにしたことはありませんでした。
これまでも具体的に山頂に登ることを計画したこともありませんでした。
本人が登りたいと思えば登れば良いし、登りたくなければ親子で登る機会が無くても構わないかなと考えていました。

 

富士登山、子どもは何歳からがいいのか?

世の中には未就学児で富士山に登ったり、小学校低学年で登ったりしている事例もあるようです。
しかし、私自身はこれまでのガイド経験の中から富士登山をするには、おおむね小学5年生(高学年)以上、大人に近い体格になった位からがいいと考えています。

これまでに小学2-3年生でも問題なく登頂出来たお子さんもいましたし、中学1年生でも酷い高山病になってしまったお子さんもいました。
そのため、年齢だけで明確に区分できるものではなく、本人の体力や体質の影響は大きいのですが、低年齢になればなるほど、負担が大きく、その分楽しむ余裕が無くなる傾向がありました。
そうした私自身の経験則から考えると、うちの子は今年小学4年生なので、少し早いかなとも思いました。

しかし、うちの子はクラスで一番背が高く、サッカーをしていて体力もついていること、そして何より今年の7月に登った火打山の登山で歩き方が大人っぽくなってきたのを確認していたことで、今年富士登山にチャレンジしてみても良いかなと判断しました。

それまでは山を歩いていても、歩行ペースが安定せず、テンションが高いとガンガン歩き、テンションが下がると歩かなくなる(休憩が増える)というムラの大きい歩き方をしていました。
子どもというのは本来そう言うもので、ちょっと疲れると直ぐに行動食を食べたがり、休憩時間ばかり増えて結果的に行動時間が長くなってしまうのです。
また、テンションが高い時は、見える範囲で親の前をガンガン進んでしまうような歩き方をするため、歩き始めのペースが速過ぎる傾向があり、こうした歩き方は高山病になりやすいものでもあります。
一定のペースで安定して歩くことが出来るようになるかどうかも、お子さんが富士登山に挑んで良いかどうかの基準にして良いのではないかと思います。

 

子どもの山の歩き方には、ムラがありがち。

なお、ごく稀に小さいうちから親の後ろについて一定のペースで歩けるお子さんもいるようです。
それもお子さんの個性だと思うのですが、大半のお子さんは難しいと思います。

道草をくって、石遊びをしたり、虫を見つけたり、その時その時でその場の自然に興味が移り変わっていくのが子どもらしさでもあり、そうした子どもらしさを奪って、「大人の後ろを歩きなさい」「もっとゆっくり歩きなさい」といった型にハメていくような指導を私自身は我が子に対して一切してきませんでした。
無駄の多い行動をして疲れ果ててしまうことも、それもまた一つの経験。
子どもは効率よく行動することなんて考えなくていいと思うのです。

その転換期がいつ訪れるのかも、その子次第なのかもしれませんが、安全な範囲であればどんどん失敗をしていいと考えています。
親が先回りして、失敗をどんどん未然に防ぐような接し方は、子どもの主体性・自主性を奪ってしまうと考えています。
子ども自身が失敗をして、ムラのある歩き方ではダメかもしれないと学び取り、無意識のうちに工夫した結果として行動が変容していくのではないでしょうか?

これまでは「おいおい」と心の中でツッコミながらもそっと見守ってきて良かったなと思っています。
我が子の場合は、9歳の時と10歳の時では明らかに山の歩き方が変わったと思います。
うちは一人っ子なので、1つの事例しか見ていないですが、子連れ登山、親子登山と一口で言っても、子どもの歩き方によって、登山スタイルも自ずと違うものになるのだということを、今回の登山で再認識しました。

なお、普段ガイドとして歩行技術の指導を行っていますが、我が子に効率の良い歩き方を教えることはほとんどありません。
少しだけアドバイスをすることはありますが、子どもから聞かれることもあまりありませんし、本人がある程度経験の中で歩き方を身につけているので、それで問題ないと思っています。

足のサイズが小さい子どもほど、富士山の砂礫や小石がゴロゴロとした道は歩きにくいものです。
息子も今回の富士登山でそれを初体験したわけですが、初めての環境であってもそれなりに適応できていたので、この点はこれまでの登山経験で培ってきた経験値が活きたのではないかと思います。

 

山頂に立たなくていいから、とにかく楽しむ

子どもと大人では歩き方が違うという話に触れましたが、それは詰まるところ、大人が登山に求めているものと、子どもが登山に求めているものが違うということを示しています。

子どもは、今目の前にあることに全力で、その一瞬を思いっきり楽しもうとする。
大人は先々のスケジュールも考えて体力を温存させて、長期的な視野で楽しもうとする。

子どもは山頂に立つことや、山の標高の高さ、周囲の評価を気にしない。
うちの子も、山頂目前で満足してしまったり、登る気がなくなって途中で下山したことが何度かあります。
そうした子どもの意識に合わせて、私自身もこれまで親子登山の時は「山頂は行けたら行く」という程度に考えていて、予定はあくまで予定として柔軟に対応できるように計画を立てていました。
とにかく子どもが楽しめることを優先してきました。

今回の富士登山も、スケジュール的には山の麓に前泊して1泊2日山小屋宿泊をする合計3日間の予定で出発しましたが、実際に登山してみて、体調が優れなかったり、酸素の薄さに登る意欲が無くなってしまったら、そこで下山するつもりでいました。
山小屋に予約を入れた時も「子どもの体調が優れなかったら下山します」と伝えておきました。

私自身富士山は思い入れのある山ですので、出来れば息子にも富士山に登ってもらいたいという思いは少しはあります。
でも、その思いが「親のエゴ」であることも良く分かっているので、子どもに我慢を強いて無理やり山頂に立たせるようなことはしたくありませんでした。

 

山頂に立つよりも大切なことがある

子どもが富士山に登ったと聞けば、周囲は「凄いね」と褒めてくれるということが多いのかもしれません。

しかし、私としては親が全て荷物を持ち、手取り足取りお膳立てした上で「登頂」という結果を与えるようなことは考えていませんでした。
登山靴の靴紐を自分で締め、自分でフットスパッツを履く
そうした登山をする上で欠かせない行動をある程度自立的に行える年齢になったことも、今年富士山にチャレンジしてもいいかなと判断をした背景になっています。

今回は24Lのザックを使用してもらい、自分の荷物は終始自分で背負ってもらいました。
飲み物も含め、小学4年生の体と比較すると少し大きいのではと思いましたが、しっかり2日間背負い通しましたし、途中で荷物を軽くしたいと言い出すこともなく、むしろ、「もっと荷物持とうか?」と父を気遣う余裕がありました。

今回の富士登山を通して感じたことは、子どもがこの程度の自立レベルになると、もはや親子というよりも、年齢差のある山友同士の関係性に近いのかもしれないと感じました。

下山する最後まで余力を残し、周囲を気遣ったり手助けできる余力を持って登山する
これは山頂に立つよりも重要なことだと思いますし、それを息子が出来ていたことが何より頼もしく感じました。

 

次回、初めての親子富士登山 2 では

当日の登山の様子を写真付きで掲載します。

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